【紀州釣りに挑む】巨ボラ禍におけるチヌ釣り考 2020/8/29
Chapter1: ボラい。
Chapter2: 夏い。
Chapter3: その特徴はボラに間違いない。
さて、釣果のほうだが先に述べた通りこの4ヶ月でたった3枚である。夢に見る爆釣劇など、妄想癖も甚だしい。実際のところこれら3枚はすべて、ボラが寄る前、ダンゴを打ち始めて数投のうちに釣れた。ボラの間をチヌが割って入れるだけのスキがあったときだけがチャンスだったと見ている。
よって振り返れば、「いかにしてボラに絶対割られない超合金ダンゴを編みだすか」だけをただただ4ヶ月もかけて追求していたことになる。ボラに捧げた夏と言っていい。
死闘に至る一連の過程を紹介しよう。
まずそもそもガッチガチのダンゴの握り方が分からないので、何も考えずにホームセンターで買った川砂を使っていた。しかし川砂は比較的粒度の粗い砂が含まれているため締めづらい。握っても握ってもボラに割られてしまう。そこで粘り気を出すためにアミエビを(シットリどころではなく)ネチャネチャにして、手をベタベタドロドロにしながら握り、ニチャニチャダンゴを放り込んでやった。すると割られなくなった。どうだ見たか。オレの勝ちだ。
しかし今度は何分待っても割れない。これでは釣りにならない。ダメか・・・もう少し水分を少なくしてみる。今度はギュウギュウと握りやすくなった。しかも割れずに底まで届く。そして数十秒ほどしてここというタイミングでダンゴが割れる。いい感じだ。しかし水面まで浮いてきたところで寝ウキが立ったまま漂う。そのままそうっと仕掛けを回収する。さし餌の周りにボール状にヌカがこびりついている。ダメだ。芯残りというやつだ。これではさし餌が見えないのでチヌは食わない。また、ヌカの分重くなるため浮力が殺されてウキが寝るところまで至らない。
ならば、もう少しダンゴをバラけやすくする。そういえば春先から軽いダンゴでチヌを寄せることを意識しすぎてヌカ:砂=6:1だった。これでは無理だ。もっと重く。5:1。もしかしたら重くすることで沈下中のボラアタックも交わせるかもしれない。
確かに幾分沈下速度は速くなったが、この程度ではボラは余裕で追いついてくるようだ。相変わらず割られてしまう。ならばとギッチギチに一生懸命締める。するとまた芯残りだ。なんならボラに吸い込まれてしまい、そのまま巨ボラとの格闘開始。立て続けに3発もすればもうヘトヘトである。
一方、砂の粒子を細かくすると、握り加減をコントロールしやすいという。ネットで調べると珪砂6号以上を使うとよいとある。早速ホームセンターで購入し握ってみる。確かに握りやすい。以前より密度が濃いダンゴが仕上がった。締まっている分重くなった気がする。しかしこれでも、握り加減が甘いとやはり割られてしまう。仕方ないのでここでもガチガチに握るのだが、そうするとまた芯残りする。そしてまたボラとの格闘が始まる。
とにかく芯残りがイヤだ。何が何でも芯残りを避けたい。そこでふと思いつく。芯に圧力がかからないよう、芯を外して握るのはどうか。こう、薬指小指あたりと手の腹で、表面付近を挟むように締めるのだ。これでダンゴをクルクルと回しながら、表面全体をまんべんなく握っていく。いい塩梅に仕上がった。これならどうだと投入するも、秒でボラに割られて芯残りもへったくれもない。当たり前である。渾身の力を込めて握ったダンゴが割られるのだから、小手先で握ったダンゴなど話にならない。
ここから先はもはや子供だましのような打ち手に出る。
芯周りが水分が少ないようにするために、乾いたヌカをさし餌にまぶす→早割り。
では芯周りに粗い砂利をまぶす→即割り。どうも締めが甘くなるようだ。
フカセの餌取り回避のための撒き餌ワークと同様、ボラを回避するために明後日の方向にダマシダンゴを打つ。そして間髪入れずに本ダンゴを打つ→初めに全員がダマシダンゴめがけて突進し破壊したのち、すぐさま全員本ダンゴめがけて高速で強打。遊泳力高すぎ。
最高速度で沈下させてボラをかわすためにヌカ:砂=8:3にアップグレード→余裕で追いつかれる。また、砂が多い分締めづらくなって途中で割られてしまう。そこで、握力で握るのではなく、体重をかけて握り、自分史上最高の締め加減を実現。うまくいくと割られずに底までもつようになる。事実、これで1枚仕留めることができた。そしてさすがに芯残りしなくなった。
しかししばらく打っていると、沈下中にダンゴアタックにつられて消し込むウキのスピードが以前よりも明らかに速くなった。しかも消し込んだウキは上がってこなくなり、忘れた頃に思いもよらない場所から浮き上がってくる。どうやらアタックしても割れないダンゴに相当怒り狂っておるのだろう、ボラは締めれば締めるほど凶暴化するようだ。
そんなわけでボラが寄ってしまうとどうにも手に負えない。釣れた3枚はすべて、ダンゴを準備し打ち始めた数投後か、昼飯を食い、しばらくインターバルを置いたあとの数投後であったことから、ボラよりも先にダンゴにたどり着けたチヌだけを掛けることができたのだと思う。
ちなみに掛けたボラはすべて回収し、タモで掬い、針を外して、再び海へと返している。掛けた瞬間は竿を叩いているため、しばらくして横へ横へと急に走り出してからようやくボラを掛けてしまったことに気づくのだが、そのころには相当にラインが出てしまっているからだ。ここで仕掛けを切るなどすると後々いろいろ都合が悪い。
なのでいつぞやのときも、超速でウキが消し込み、超速で沖へと走り出し、ドラグが前代未聞の鳴りを響かせたので、これは相当な巨ボラ、場を荒らさぬよう早く回収すべし、と雑に手繰り寄せようとした。が、どうにも重い。時折左へ右へと走っては止まり、走っては止まりしてなかなか寄ってこない。しばらくするとまたジャーンとドラグを鳴らして沖へ走る。その特徴はボラに間違いない。
そう思って10分ほど格闘し、ようやく足元でハリスまで浮いて見えたとき、水面下で赤い背中がギラァ!と光る。アーハン?
Chapter4: ほなボラと違うか。
人生初のマダイである。青岸でマダイて。足元で見えてからの突っ込みの力も回数もチヌのそれとは全然違う。タモからはみ出るマダイをなんとか掬い、ずりあげる。きれいな天然マダイであった。54cm。
私のなかでマダイとの駆け引きが巨ボラのそれと完全に同化してしまったのは誠に残念であるが、こういうことがあるから夏の紀州釣りはやめられないものだ。ただ、今後はもう少しボラの少ないところで釣ることにしよう。
Chapter5: でも和歌山のおいやんが言うにはな。
マダイを掛けたとき、横で釣りをしていたご婦人が声をかけてくれた。こんなところでマダイ居てるんですねすごいですねきれいですね、と一緒に喜びを分かち合ってくれた。「今晩は楽しみですねやっぱり刺し身でしょうかね」と、さすがご婦人、気になるのであろう、食べ方をレコメンドしてくれたので、もちろんですウハハハハ!、と得意げに返す。
しばらくして、締めるためにマダイを防波堤上に水揚げしたところで、通りすがりの和歌山のおいやんが見て驚く。こんなところでマダイて釣れるんか、何?カゴ釣りか?紀州釣り?すごいなあ、すごいでしょう、とここでも喜びを分かち合う。そしてここでも「今晩はアレか、やっぱり刺し身かウハハハハ!」
和歌山の人はみな、マダイが釣れたら二言目には刺し身を食わしにかかるようだ。
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