【カゴ釣りレポート】「3つ3つ」のタナの意味 in 煙樹ヶ浜 2020/02/15
Chapter0: ベリー・ベストオブ・スポーン
煙樹ヶ浜とはどんな釣り場かと問われれば、私は迷わずこう答えるだろう。
ひとまず魚種は豊富だ。間違いなく、狙ってもない魚が釣れる。しかもひととおりデカい。その意味で、昔の和歌山北港魚釣り公園、今ならとっとパーク小島が似ているかもしれない。
だがまあまあ釣れない。広いサーフだ。ポイントはまず分からない。ただひたすらカゴを投げるだけだ。延々。
嫌になる頃にこういうのが掛かる。あるいは余所見をしている時に。あるいは弁当食ってる時に。ウキが消し込む瞬間はまず見たことがない。この釣りの最大のアドレナリン放出タイミングにも関わらずだ。その代わり、置き竿がガタタタタッ!と鳴って海にすっ飛んでいくのを必死で食い止めるときに違う種類のアドレナリンが出る。
仕事に疲れ、人生の諸行無常に想いを馳せるとき、手元のどこでもドアをふと開いてみた先にこんな景色が見えたら誰でも迷わずダイブするだろう。はっきりいって和歌山の釣り場はどこもかしこもそのくらい景色が素晴らしい。どこでもドアの完成が待たれる。
しかしながらここでのカゴ釣りはなかなかに難易度が高い。サーフでカゴ釣り。ドがつく遠投で、80m先の表層なりカケ上がりなりを点で打つ。ゴルフのドライバーでピンを狙うことを想像してみてほしい。◯ッズ もマ◯ロイもファウ◯ーもビックリだ。知らんけど。
そしてタナ。なだらかに延々とカケ上がっているのだろうか、投入をしくじり、カゴが狙いよりも手前に落ちるとタナが合わない。初冬のカツオを除いて底狙いの場合はタナをピタッと合わせる必要がある。ベタピンギリギリの正確なキャストが必要なのだ。
さらにジャリ。今回の釣行のようなウネリが高い日には、コイツに一番神経を擦り減らされることになる。波打ち際で、波が打ち寄せ引かれるそのときにラインにジャリが噛んでくる。ボーッと気づかず、ああ、引っかかってしもたな程度に考え、何気なく引き剥がして次のキャストをしようものならあっという間もなくプッツリ数十m分のラインも仕掛けも全部おさらばだ。もちろんだいたいそういう時に自己最高飛距離を達成する。回収出来ないが。
雄大な景色に波の音、ジャリに仕掛けを何度もブチ切られ、疲弊しフラフラになりながらもキャストが決まればヌカ喜び、時に仕掛けが馴染んでウキがスポーン!大物ガツーン!これが私の知る煙樹ヶ浜である。
どう考えてもレッツゴー!スポーン!ライナウ!しかないではないか。
Chapter1: 波の高さに不安しかない日
現地には朝6:30に着いた。辺りはまだ薄暗い。今日の釣り座はトイレ前から西へ数十mあたりだ。左右に並ぶルアーマン。やや間隔の空いたところに我々4人、ギュッと並んで釣り座を取る。まあまあ投点がとっちらかろうが、4人で固まって打った方が撒餌が効くとの算段だ。もちろん釣果には全く影響はなかった。
釣り座に着き、まず波打ち際に立つ。おや、土手がない。数回に一度のうねりが足元をさらう。さらに数回の後、さらうどころではない大波が下半身まで迫る。慌てて逃げる。明るくなって気づいたが、相当後方までジャリがビショビショではないか。
こうなるとアレだ。釣り座を波打ち際はるか後方に取り、エサを仕込む!波間を見計って波打ち際までジャリジャリ歩く!波が引いた時にド遠投!すぐさま後方に逃げる!大波ドパーン!だ。気分は戦場真っ只中だ。
竿(ヤリ)を担いで前進!ジャリジャリジャリジャリ!竿(ヤリ)を打つ!ヒュッ!退却!ジャリジャリジャリジャリ!波!ドパーン!だ。
時に横で高波に煽られ逃げ足をジャリに取られおっさん(釣り仲間)は転倒する。時に彼方ではもはや諦めたか全身で波を受け止めるも動じないルアーマン。常連のおいやんは遥か後方から高みの見物。
きっと今この釣り場はいろんな人の想いが複雑に絡まり合って、ギリギリの冷静と情熱がバランスしているであろう。いや、残念だが慌てているのは我々だけのようだ。
Chapter2: メイク・スポーン
先に申し上げた通り、我々はこの波にひとしきり翻弄され、全員仕掛けという仕掛けを尽く失うこととなった。なんというか、踏んだり蹴ったりである。
そりゃこれだけ前後運動甚だしければ、足元のラインになどかまっている余裕もなくなろうというものだ。
ヘトヘトになって気を抜けば波打ち際でラインにジャリがしっかり噛んでいる。あっちでもこっちでも。もちろん私も高切れした。
かねてから試したかった自作ウキもみんなに配って試す。が、一人を除いて全員1投目で羽根がもげた。やはりシャフトと羽根を接着剤でくっつけただけではダメなようだ。せっかくみんなにあげたのに、きりたんぽみたいになって帰ってきてしまった。
一方、自作カゴのほうはとても頑丈にできたようだ。全く壊れる様子がない。撒き餌の出具合も申し分ない。高切れで失ったが。
さて釣果のほうだが結果はヘダイ1発のみだ。40cm。
諸々により心身ともに疲れ果て撒き餌もなくなる14:20ごろ、最後の一投でコイツは来た。奇跡的に吹き出した追い風により、奇跡的に仕掛けが80mラインに到達、タナ4.5ヒロ+ハリス2ヒロ、奇跡的に沖へ払い出す離岸流もあり、さし餌はゆっくりと馴染む。投入後1分ほどだろうか、おそらく6ヒロはあるだろう底までさし餌が入ったか、前アタリからのスポーン!ウキが消し込んだのだった。
今まで最後の1投で釣り上げるロマンチックなブログ記事を見るたびに、そんなマンガみたいなことあるわけなかろうでっち上げだでっち上げ、と思ってましたが反省してますごめんなさい。ホンマにあるとは。この私に。
それにしてもよく引いた。ドラグもジリった。控えめに言って大満足だった。
釣果はこれのみだったが、実際のところアタリは仲間のも含めて他に2回あった。
一つは釣り始めて2時間ほどのウネリが収まりかけた10:30ごろ、小さい土手の上から60mほどのところに投げ、余裕こいてジャリの上に竿を置いたりなんかして、余裕こいて土手の上に座ってたりなんかしてたときだ。
突然大きく土手を超えてくる大波を被り、置き竿が派手に打ち流される。自分もビショビショになりつつ慌てて竿を取ったところ、竿先から波打ち際までラインにジャリがガッチガチに噛んである。
丁寧にジャリを取り除くその間にふと海を見ると、ウキがない。あっと慌てて竿を立てたその瞬間、竿先でPEラインがフッと力なく切れてしまった。しばらく辺りを見回すがついぞウキは浮いてこない。60mのPEとウキと天秤とカゴと2ヒロのハリスと魚がそのままどっかへ行ってしまった。
その後、ジャリに寝そべってしばらく空を見つめたのは言うまでもない。仲間にもジャリにだけは気を付けろよつってた矢先のドボン。ちくしょう。ジャリのバカ。
次。何やら遠くで仲間が騒いでいる。波音がデカ過ぎるのでいつも全く聞こえないが、海を見れば40mあたりのところを何やら仲間のウキが流されてくる。ああ、あっちでもPE切れちゃったんだな。私の仕掛けを絡めたら回収できるかもな、などと少し沖めにカゴを投入。着水して寄せようとした瞬間、スポーン!と仲間のウキが消し込んだ。私のウキではなく。
と、すぐ浮いてくる。あ?と見てたらまた沈む。また浮いてくる。なんならウキが浮いたまま岸めがけて近づいてくる。ついには岸沿いに左へ右へ。
その間私を含め仲間4人で走るウキ目がけてジグやらカゴやら投げ倒す。がどうにも掛からない。
ええおっさん4人がわあわあ言いながらさんざん投げた幾投めかで、ようやくウキの持ち主自らジグでウキを絡め取った。喜びに叫ぶ間もなくラインがギューン!ブチっ!またしても仕掛けと魚はどっかへ行ってしまった。残されたのはジグのハリに刺さったウキ。マンガかよ。
なんというか、おっさんどうしが年甲斐もなく魚に翻弄され、緊張と笑いの展開が早過ぎる。そして翻弄された分、しっかり疲労度が高い。
Chapter3: 改めて「3つ3つ」のタナの意味
昨年末にここ煙樹ヶ浜に一人で来たときのことだ。ふらりと地元のおいやんが声をかけに来て、釣果を聞かれる。その日は冒頭のカンダイが釣れたと言うと、タナを聞いてくるので、ウキ止めは2ヒロだが潮が動かないのでハリス2ヒロも馴染んで、4ヒロになってるんじゃないかと言うと怪訝な顔をする。そしてタイトルの「ここは3つ3つやわ」とだけボソリと言って去ってしまった。ウキ止め3ヒロ、ハリス3ヒロで常連の人はみんな釣っているぞということらしい。
通常カゴ釣りではカゴまでをタナと呼び、ウキ止めをセットする。しかし彼らは、走らない潮の時はハリスもタナに含めてカウントし、ウキ止めをセットしているように思う。確かに煙樹ヶ浜はあまり潮が走らない。この速さで長ハリスが潮にたなびく絵はどうにも想像しづらい。
今回釣れたヘダイは潮でフケた分も含めてウキ止めからハリまで6.5ヒロ。正確に3つ3つ、ではないが、これで釣れたということは、タナの考え方はハリス分も含めて、がおそらく正しかろう。
そして、おそらく80mラインには6ヒロに至るカケ上がりがあって、そこを回遊するやつが多いから、そこまで遠投でカゴを投げ込むのだろう。
ただ、40mでも60mでも実際にはアタリがあったわけなので、要するにトントンのタナをキープせよ、より自然にさし餌をフカセろ、ということだと思う。そして、釣れない時は近投と遠投をローテーションするのも一つの手だと思う。
どうあれ今年に入ってようやくまともなサイズの魚に出会えて良かった。はしゃぐだけはしゃいで、釣れたらデカい場所。まさにベリー・ベストオブ・スポーンである。
今、早速羽根がもげないようウキを改修した。早くも次の釣行計画が待たれる。ウキだけに◯キウ◯。
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